独立のため資格を生かして正社員に 〜仕事に誇りを持って、子どもに働く親の背中を見せる〜 

〜Yさん プロフィール 〜 Yさん写真 小.jpg

40代、文京区在住、歯科技工士、正社員3年目。息子さんは中学3年生。初回来所は2016年2月。はあと飯田橋では、応募書類作成、求人情報検索、住まいのことや日ごろの悩みの相談。就職後は職場の悩みを相談。


〜インタビュー〜


◆ 正社員になろうと、はあと飯田橋に 

— Yさんのはあと飯田橋への最初のご来所は2016年の2月でした。きっかけはなんでしたか?

 離婚後実家に戻っていたのですが、いろいろ不都合がでてきたので、息子が中学校に上がるタイミングで、実家を出たいと考えました。それにはまずは正社員になりたい。転職活動でわからないことを相談できる場所はないかとインターネットで検索したら、はあと飯田橋が出てきたんです。正社員を目指すには履歴書の書き方とかパートとは違うだろうと思ったし、同じ立場の人のお話も聞けるかと思って相談させていただきました。

 

— ご自分で調べてたどり着いてくださったのですね。書類を作って2、3件の応募で転職が決まったのでしたね。今のお仕事について教えてください。

 国家資格の歯科技工士として働いています。大学病院の仕事を請けている会社の、入れ歯をメインに作る部門です。

 

◆ 歯科技工士の資格を生かして 

— 技工士になろうという理由は何でしたか?dental-2450766_960_720.jpg

 高校生の時に父に上顎洞の癌が見つかったんです。手術後は口の半分は入れ歯になる。できれば歯科技工士になって私が父の入れ歯を作ってあげたいと思いました。私は小さいころからプラモデルとか細かいものを作るのが好きでした。それを見ていた両親が歯科技工士という職業があるということを教えてくれていました。父が癌を患ったのはちょうど「進路どうしようか」って考えているときでしたね。

 

— お父様のために技工士になろうと決意されたのですね。入れ歯を使っていただけましたか?

 20代半ばで作ってあげました。2つ作って、2つ目は亡くなるまで使ってもらえたんです。夢がかないましたし、父も喜んでくれました。

 

—お父様への思いがきっかけで資格を取られたわけですけど、技工士一筋でお仕事をされてこられましたか?tooth-replacement-759929_960_720.jpg

 はじめは技工所で働きました。残業が多い過酷な職場でした。結婚後しばらくしてから家庭を大事にするという選択をして技工所を辞め、実家の飲食店を手伝いつつ、近所でパートですね。子どもが保育園のころから歯科医院の歯科助手や受付の仕事をして、職種をだんだん歯科のほうに戻しました。歯科医院のパートを7〜8年やってました。歯科医院で働いていれば、患者さんが技工士の作ったものをどう思ってるのか、どのように使ってくれるのかがわかると思ったんです。作る立場とは逆の使う立場のことも知りたかった。技工所の中にいるだけはわからない生の声を聞きたかったのです。技工士としての糧になるかなと思って。

 

仕事と家庭の両立

— セーブした働き方だったけれど、そのときのご経験が今役立っているのですね。そして、満を持しての正社員への転職。今はどのような立場で働いてらっしゃいますか?

 入社3年目で、立場的には平です。役職に就きたいというのはないですね。若いときに技工所で責任者までやっているので、正直現場でやりたいですね。仕事ができれば、それで自分の作ったものが、お口の中に入って、「この入れ歯いいね。最高だね!」って患さんに思ってもらえるものを作ることができれば。

 

— 今もやはりお忙しいですか?

 残業してますね。8時、9時まで。早出もしたりね。


— 残業も多いとなると、息子さんは中3とはいえ、まだまだご心配なのではないですか?

 受験生なので、塾の帰りが9時半とか10時なんです。自習室も利用しているので塾に預けているようなものです。塾は家から歩いてすぐのところなので安心です。学校も家の目の前ですし。

 

— 勤務先まではどれぐらいですか?

 ドアツードアで30分です。

 

— 通勤通学が楽ですね。なにかあったら、息子さんのところにすぐ駆けつけられますね。

 

◆ 活用できる資源はためらわずに利用

— 実家から出られた時ですが、区役所にご相談に行かれましたね。

 ひとり親向けの不動産屋を紹介してもらいました。実際には、普通の不動産屋で探して契約したのです。転校は避けたかったし、ほかにもいろいろと制約があり、狙っていたエリアが狭かったため、ご紹介いただいた店では希望にあった物件がなかったんです。それから、引越しのときに、東京都母子及び父子福祉資金の転宅資金を26万円借りました。6ヶ月の据え置き期間があって、そこから3年以内に返済。月々7,500円返してます。礼金・敷金にあてて、家具もそろえたのでその額が必要でした。手元に少しは残しておきたかったし。あとは、保険会社から学資保険の限度額内で40万円借りました。そっちはもうすぐ完済です。自分のもらえる給料の範囲内でやっているので、大変なわけではないです。

 

— どうしても引っ越したかったから、まず正社員を獲得。経済的に安心したところで、思い切ってお金を借りて独立され、今は着実に返済してらっしゃるのですね。ところでお部屋を借りるときの保証人はどうされました?

 義兄に頼めたと思うのですが、迷惑かけられないと思って保証会社を使いました。年額約7,000円。一ヶ月あたりにするとたいした金額ではないですから、割り切って。保証会社のほうがいろいろ気遣いしなくてもよかったし。

 

今の現場でもっとよい仕事がしたい

− Yさんのすばらしいのは、その辺の割り切り方ですね。大変だとわかっていても戻ってきた技工士としての職場、今後の夢ややりたいことはありますか?

 若いころは純粋に自分の技術を向上させたかったんです。ドイツに留学したいという気持ちもありました。ドイツでは、技工士が義眼とか義肢とか作るので、そっちの勉強もしたかった。

 今は、人を育てることかな。職人って育てないと育たないじゃないですか。

 あとは、今やっている現場でもっと良い仕事がしたい。今のニーズにより良く応えていきたい。それには、歯科技工学会の研修会やワールドデンタルショーなんかのセミナーに参加して、常に第一線university-105709_960_720.jpgの知識や技術を身につけ続けたいですね。生涯職人として、患者さんに喜んでいただけるものを作っていきたいですね。育つ前に辞めていってしまう。同僚とも「下を育てる年齢になってきたね」って話してます。私達の持っている技術を伝えていきたい。私は新卒の職場ですばらしい先輩に何人か出会っているんです。その人たちに食らいついて教えてもらってきたので今がある、と思ってるんです。

 息子に胸を張って「母ちゃんは技工士だよ」って言える働き方をしたいですね。「子どもは親の背中見て育つ」という言葉がありますが、子どもに顔向けできない人生は送りたくないですね

 

− Yさんは胸を張って息子さんの前に立てると思います。ありがとうございました。


◆インタビューを終えて 

 

 息子さんの成長に合わせて働き方を変えてこられたYさん。技工士の仕事が好きで誇りを持っていることが伝わってきます。職場や職種は変えても歯科関係という筋が一本通っていらっしゃいました。正社員への転職はお子様の成長を待たれての冷静な判断でしたね。必要な支援を無理せず柔軟に選択され活用してこられたのが印象的です。益々のご活躍を期待します。

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